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神戸地方裁判所 平成8年(ワ)625号 判決

反訴原告

安山吉南

反訴被告

伊藤物産運輸株式会社

ほか一名

主文

一  反訴被告らは、反訴原告に対し、連帯して金五三四万三六三三円及びうち金四八四万三六三三円に対する平成五年八月二三日から支払済みまで、うち金五〇万円に対する平成八年四月四日から支払済みまで、各年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その三を反訴原告の負担とし、その余を反訴被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

反訴被告らは、反訴原告に対し、連帯して金一三〇三万〇八〇七円及びうち金一二〇三万〇八〇七円に対する平成五年八月二三日から支払済みまで、うち金一〇〇万円に対する平成八年四月四日から支払済みまで、各年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、後記交通事故(以下「本件事故」という。)により傷害を負つた反訴原告が、反訴被告福田佳三(以下「反訴被告福田」という。)に対しては民法七〇九条に基づき、反訴被告伊藤物産運輸株式会社(以下「反訴被告会社」という。)に対しては民法七一五条に基づき、損害賠償を求める事案である。

なお、付帯請求は、弁護士費用を除く内金に対する本件事故発生の日から支払済みまで、及び、弁護士費用に対する反訴状送達の日の翌日から支払済みまで、民法所定の年五分の割合による各遅延料金であり、反訴被告らの債務は不真正連帯債務である。

また、反訴被告らから反訴原告への債務不在確認請求事件(本件事故に基づく反訴被告らの損害賠償債務が金一九〇万円を超えては存在しないことの確認を求めるもの)は、訴えの取下げにより終了した。

二  争いのない事実等

1  交通事故の発生

(一) 発生日時

平成五年八月二三日午後七時一〇分ころ

(二) 発生場所

兵庫県三木市本町二丁目七番三一号先交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 争いのない範囲の事故態様

反訴原告は、原動機付自転車(三木市ゆ六四六。以下「反訴原告車両」という。)を運転し、本件交差点を北から南へ直進しようとしていた。

他方、反訴被告福田は、大型貨物自動車(神戸一一く五七三〇。以下「反訴被告車両」という。)を運転し、本件交差点を北から南へ直進して、反訴原告車両の後方からこれを追い越そうとしていた。

そして、本件交差点内で、反訴被告車両の左側面が反訴原告車両に接触し、反訴原告車両は転倒した。

2  責任原因

反訴被告福田は、本件事故に関し、追い越しの際に側方の車間距離を十分にとらなかつた過失があるから、民法七〇九条により、本件事故により反訴原告に生じた損害を賠償する責任がある。

また、反訴被告福田は、本件事故当時、反訴被告会社の業務に従事中であつたから、反訴被告会社は、民法七一五条により、本件事故により反訴原告に生じた損害を賠償する責任がある。

三  争点

本件の主要な争点は、反訴原告に生じた損害額である。

四  証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

第三争点に対する判断

右争点に関し、反訴原告は、別表の請求欄記載のとおり主張する。

これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容欄記載の金額を、反訴原告の損害として認める。

一  反訴原告の傷害の部位、程度、入通院期間等

まず、反訴原告の損害算定の基礎となるべき反訴原告の傷害の部位、程度、入通院期間等について判断する。

1  反訴原告の傷病名

反訴原告が、本件事故により、両下腿足挫傷、右肩肘前腕挫傷、右腹部臀部挫傷、右手分挫傷、頸部捻挫、腰部捻挫の傷害を負つたことは当事者間に争いがない。

2  入通院期間、症状固定

反訴原告が、右傷害により、平成五年八月二三日から同年九月二三日までの三二日間、服部病院に入院したことは当事者間に争いがない。

また、甲第四号証の一、二、第五号証、乙第一号証の一、二、第三号証の一ないし三、第四号証の一、二、第六号証の一ないし三、第七ないし第九号証によると、反訴原告が、右傷害により、同月二四日から平成七年一〇月一二日まで同病院に通院したこと(実通院日数五〇三日)、反訴原告の傷害は、同日症状固定した旨の自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書が発行されていることが認められる。

なお、自動車損害賠償責任保険手続においては、反訴原告の右後遺障害は、自動車損害賠償保障法施行令別表に定める後遺障害には該当しない旨の認定がされたことは当事者間に争いがない。

二  損害

1  治療費

平成五年八月二三日から平成六年一月三一日までの治療費が金一二五万九二五六円であることは当事者間に争いがなく、乙第一号証の二、第四号証の二、第六号証の二、第九号証によると、この他に、平成六年二月一日から平成七年一〇月一二日までの治療費が金一五九万〇四〇七円発生したことが認められる。

なお、反訴被告らは、平成六年九月一一日以降の治療費は本件事故と相当因果関係がない旨主張するが、甲第五号証、乙第七号証、反訴原告の本人尋問の結果によると、右の日以降も有効かつ適切な治療が施されていること、平成七年一〇月一二日に症状が固定した旨の自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書が発行されていることが認められ、これによると、平成六年九月一一日以降の治療費と本件事故との間の相当因果関係を優に認めることができる。

したがつて、治療費は、右合計額の金二八四万九六六三円である。

2  入院付添費

甲第四号証の一、二(特に甲第四号証の二の中の要付添看護証明書)によると、反訴原告は、平成五年八月二二日から同年九月七日までの一六日間は一日中の付添看護を、同月八日から同月二一日までの一四日間は夜間のみの付添看護を必要としたこと、右期間に反訴原告の近親者が現実に付添看護をしたことが認められる。

そして、入院付添費は、一日あたり金四五〇〇円、夜間のみの日は一日あたり金二二五〇円の割合で認めるのが相当であるから、次の計算式により、金一〇万三五〇〇円となる。

計算式 4,500×16+2,250×14=103,500

3  入院雑費

入院雑費は、前記入院期間三二日間につき、一日あたり金一三〇〇円の割合で認めるのが相当であるから、次の計算式により、金四万一六〇〇円となる。

計算式 1,300×32=41,600

4  通院交通費

当裁判所に顕著な反訴原告の住所(兵庫県三木市志染町中自由が丘一丁目)と服部病院の所在地(三木市大塚)との位置関係、弁論の全趣旨によると、反訴原告が通院一日あたり少なくとも金三〇〇円の通院交通費を要した旨の反訴原告の主張を認めることができる。

そして、反訴原告の実通院日数は、前記のとおり五〇三日間であるから、通院交通費は、次の計算式により、金一五万〇九〇〇円となる。

計算式 300×503=150,900

5  通院雑費

通院雑費の内訳に関する反訴原告の具体的な主張はなく、特にこれを認めなければならないような証拠もない。

6  休業損害

反訴原告は、本件事故当時の反訴原告の収入が一か月金三〇万円あつた旨を主張し、反訴原告の本人尋問の結果の中にはこれに沿う部分もあるが、他に客観的な証拠がない本件においては、これを直ちに採用することはできない。

そして、弁論の全趣旨によると、反訴原告の休業損害の基礎となるべき収入を、賃金センサス平成五年度第一巻第一表の産業計、企業規模計、女子労働者、学歴計、五〇~五四歳に記載された金額である年間金三三五万二六〇〇円と認めるのが相当である。

また、甲第二号証、第五号証(特に第二丁の平成六年四月二六日付診断書)によると、反訴原告の就業がまつたく不可能な期間は平成五年九月二三日までであつたこと、平成六年九月ころには、反訴原告を診断していた医師は、症状固定の診断書を発行しようと考えたこともあつたこと、反訴原告の通院中の治療は理学療法が中心であつたことが認められ、これによると、反訴原告は、入院期間の三二日間は収入のすべてを喪失し、通院期間の前半にほぼ相応する一年間にわたつて収入の五〇パーセントを喪失していたものとして休業損害を算定するので相当である。

したがつて、休業損害は、次の計算式により、金一九七万〇二二六円となる(円未満切捨て。)。

計算式 3,352,600×(32÷365+0.5)=1,970,226

7  慰謝料

前記認定の本件事故の態様、反訴原告の傷害の部位、程度、入通院期間、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件事故により反訴原告に生じた精神的損害を慰謝するには、金一五〇万円をもつて相当とする。

8  小計

1ないし7の合計は、金六六一万五八八九円である。

三  損害の填補

反訴被告らが、反訴原告に対して金五一万三〇〇〇円を支払つたこと、治療費金一二五万九二五六円を負担したことは当事者間に争いがなく、右合計金一七七万二二五六円がすでに填補されたものとして、反訴原告の損害から控除されるべきである。

したがつて、右控除後の金額は、金四八四万三六三三円である。

四  弁護士費用

反訴原告が本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、反訴被告らが負担すべき弁護士費用を金五〇万円とするのが相当である。

第四結論

よつて、反訴原告の請求は、主文第一項記載の限度で理由があるからこの範囲で認容し(遅延損害金の始期は反訴原告の主張による。)、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 永吉孝夫)

別表

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